スターシップV3打ち上げ中止の背景と判明した原因
カウントダウンで何が起きたのか
米テキサス州スター ベースで現地時間2026年5月21日夕方(日本時間22日午前)、スペースXはスターシップV3初号機(Flight-12)の打ち上げに挑みました。しかしカウントダウンはT-40秒のホールドを複数回繰り返した末、7時37分(米東部標準時)に中止が宣言されました。打ち上げ窓は残っていましたが、推進剤の温度管理限界を超える前に作業を打ち切る判断が下された形です。
マスク氏が明かした「油圧ピン」問題
打ち上げ中止から数時間後、イーロン・マスク氏はSNSで「ロケットを保持するタワーアームの油圧ピンが最後まで引っ込まず、安全上の基準を満たせなかった」と説明しました。ピンが作動しないままではアームを開放できず、離床直後に機体や地上設備を損傷するリスクが生じるため、カウントダウンは自動停止しました。
水デフレクターも影響?複合的な要因
スペースXの公式ウェブキャストでは、タワー側だけでなく発射台下部の水デフレクター(排水・防音システム)の圧力センサー値にも異常が検出され、カウントダウンをリサイクルしたことが言及されています。大型ロケットの初使用パッドでは「配管一本の温度差」が打ち上げ可否を左右することも珍しくありません。新設のPad-2を含め、複数の新要素が重なった今回の初飛行で安全側に倒れた判断は妥当と言えます。
次回打ち上げへの見通し
マスク氏は「問題の油圧部品を夜間に交換できれば、24時間以内の再挑戦が可能」と述べています。実際、現地では技術チームが直ちに分解点検を開始し、液体メタン/液体酸素の再充填に備えて推進剤の再冷却作業も進められています。
スターシップV3とは
- Raptor 3エンジンを採用し、推力とメンテナンス性を向上。
- 耐熱タイルの配置を最適化し、再使用時のターンアラウンド短縮を狙う。
- 上段には模擬Starlink V3衛星を搭載し、軌道上での展開試験を実施予定。
- 新設Pad-2からの初打ち上げで、急速発射サイクル対応の地上設備を検証。
スターシップV3は、NASA「アルテミス」計画の月面着陸ミッションや火星輸送の鍵を握る“実運用型”への第一歩と位置づけられています。今回の遅延は残念ですが、開発段階の試験飛行では「データこそ最大の成果」。トラブルを一夜で修復し、翌日に飛ばすという迅速な対応そのものがスペースX流の開発哲学を物語っています。
