スペースX「スターシップV3」12回目無人飛行試験レポート

スペースX「スターシップV3」12回目無人飛行試験の様子。離昇する宇宙船と周囲の人々の様子を描いたイメージ。

スペースX、新改良「スターシップ V3」12回目の無人飛行試験を実施

米テキサス州スターべースで現地時間2026年5月22日夕方(日本時間23日早朝)、スペースXは開発中の巨大宇宙船スターシップの最新改良型「V3」を用いた12回目の無人統合飛行試験(Flight 12)を行いました。高さ120 m超の2段式ロケットが噴煙を上げて離昇する様子は、ライブ配信を通じて世界中に届けられました。

今回の試験のポイント

  • 初の「スターシップ V3」打ち上げ:新型Raptor 3エンジンを搭載し、推力と燃焼効率が向上。
  • 新設Pad 2からの発射:打ち上げ台と回収アームも高速化され、運用サイクル短縮を目指します。
  • 模擬スターリンク衛星20基+実証衛星2基を放出:軌道投入時の姿勢制御を検証。
  • 大気圏再突入・インド洋着水:機体は計画通り鼻上げ姿勢でスプラッシュダウンし、重要データを送信しました。
  • 下段ブースターもメキシコ湾に制御落下:将来の回収・再利用に向けた飛行プロファイルを確認。

スターシップ V3の主な改良点

V3では機体構造を一新し、推進剤タンクの軽量化と熱保護タイルの耐久性向上を両立。背面にはドッキング兼推進剤移送用ポートが4か所追加され、軌道上補給や月面ミッションを視野に入れています。また、33基のRaptor 3を束ねるブースター側エンジンクラスターにも冷却系の改良が施され、過去の試験で課題となった振動と配管温度上昇を低減しています。

試験結果と意義

上段6基のうち1基が離昇直後に停止し、計画していた軌道上での再点火試験は見送られましたが、それ以外の主要目標――模擬衛星放出、再突入耐熱データ取得、最終着水――は完了。スペースXは「新しい設計でここまで達成できたことが大きな一歩」と評価しています。

今後の展望

NASAはアルテミス計画でスターシップを月面着陸船として採用しており、今後数年で無人月面タッチダウンを実証することが求められています。本試験で得られた再突入・着水時の熱・構造データは、その認証プロセスを加速させる鍵となります。また、スペースXは打ち上げ頻度を「年内に月数回」へ引き上げる方針を公表しており、Pad 2運用開始がその下地となる見込みです。

米国の民間宇宙開発は、競争的な技術革新と商業資本の投入が相乗しながら急速に前進しています。スターシップ V3 Flight 12は、その最前線を示す最新のマイルストーンとなりました。